猫俳句大賞

猫俳句バックナンバー

8月3日週の猫俳句

小春日の
猫の入りくる
診療所

瀧澤伊代次

解 説

飲み屋やたばこ屋、お寺、駅など、いろんな場所に名物猫や看板猫が存在しますが、この句には、診療所に出入りする猫が登場。猫院長とか、猫ドクターとか、いろんなあだ名を付けられ、地元の患者さんたちの間で人気者になっているのかも。

この句の季語は、小春日です。春という言葉が入っていますが、初冬の季語で、まるで春のような、おだやかで暖かい天気の日をさします。

診療所にやってきた猫には、お気に入りの場所があるのかもしれません。窓から小春日の暖かい陽ざしが入る待合室の椅子のうえに、前足と後ろ足を折りたたむ香箱座りで、目を細めている猫の姿が思い浮かびます。診療所に集まる患者さんたちにとって、そんな猫の姿が、何よりも癒しになるのではないでしょうか。

8月3日週の猫写真

写真提供:横浜市 すのぅさん

 

7月27日週の猫俳句

猫さがす
ビラ見てをりぬ
夕桜

細谷喨々

解 説

街の電柱などに、迷い猫を探すビラが貼られていることがあります。そこには猫の写真とともに、猫種や毛並み、大きさ、鳴き声などの特徴、迷子になった時間や場所、飼い主の連絡先など、たくさんの情報が書かれています。思わず立ち止まって、じっくりビラを読んでしまった、皆さんにも、そんな経験があるのではないでしょうか。

迷い猫のビラには、なんとしてでも猫をみつけたい、という飼い主の強い気持ちが込められています。中には、飼い主一家の子供が、つたない文章で懸命に猫の特徴を伝えようとしているものもあり、心を打たれます。

この句の季語は「夕桜」で春。夕方に見る桜には、一層物悲しさが感じられます。迷い猫は、今頃どこにいるんだろう。無事でいてほしい、できることなら自分が見つけてあげられたなら……夕陽が、桜と猫のビラを照らしています。

7月27日週の猫写真

写真提供:福岡県 レックのママさん

 
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