猫俳句大賞

猫俳句バックナンバー

7月6日週の猫俳句

蟷螂の
斧向けられし
猫の顔

加藤楸邨

解 説

蟷螂(とうろう)はカマキリのことで、秋の季語。自分の弱さをかえりみず、巨大な敵に軽率に挑んでしまうことを「蟷螂の斧」といいますが、自分に向かって前足を振り上げて威嚇してくるカマキリに対して、猫はいったいどんな顔をしたのでしょう。

「なんだこいつ。こんなちっぽけなヤツ、戦えば100%おれが勝つはずだけど……なんで逃げないんだろう。毒でも持ってるのかな」と、気味悪そうな顔でカマキリを眺めていたのかも。

猫は基本的にポーカーフェイスと言われていますが、小さなカマキリの思わぬ抵抗にあって、つい平静を失ってしまった猫の姿に、作者は面白みを感じたのかもしれません。

7月6日週の猫写真

写真提供:東京都 葉菜さん

 

2月3日週の猫俳句

おそろしや
石垣崩す
猫の恋

正岡子規

解 説

春になり、猫が発情期を迎えると、夜な夜なオス同士がメスを巡って、唸り声をあげてにらみ合ったり、小競り合いを繰り広げるようになります。大抵は、お互い顔見知りなので、本気になることはないといわれていますが、時には、取っ組み合いの大喧嘩に発展することもあるようです。

この句は、「おそろしや」というくらいですから、常軌を逸した激情のバトルが繰り広げられたに違いありません。たとえ古くなっていたとしても、石垣を崩すほどの大立ち回りです。それでも、メスが「私のために争わないで」と、止めることはないのでしょう。

猫の激しすぎる恋模様にあきれつつ、情熱を燃やし、全身全霊で恋に挑むオスたちを、少し羨ましいと感じてしまう一句です。

2月3日週の猫写真

写真提供:島根県 なつめさん

 
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