猫俳句大賞

猫俳句バックナンバー

9月28日週の猫俳句

蚊柱に
猫が片手を
入れにけり

鈴木鷹夫

解 説

皆さんは、蚊柱をみたことがありますか?夏の夕方になると、畑や河川敷などにユスリカが群れ集まり、まるで柱のようにかたまって飛ぶことから、その名前がつきました。蚊は夏の季語です。

下校中の子供たちが、蚊柱を発見して、面白がって砂を投げたり、棒きれを振り回して追い散らしたりする光景はよく見られますが、この句の猫も、蚊柱に興味津々です。おっかなびっくり、まずは蚊柱の中に片手で軽めのジャブを打ち込んだ、という感じでしょうか。

危険がないことがわかると、猫は、全力パンチで蚊柱をひっかきまわそうとしたりするかもしれません。いくら猫パンチを浴びせても、煙のように手ごたえがない蚊柱に、やがて興味を失って、美味しいごはんが待つお家に帰っていったのでしょうか。ちょっとおまぬけで、愉快な猫の姿が思い浮かぶ一句です。

9月28日週の猫写真

写真提供:東京都 小川智之さん

 

9月14日週の猫俳句

敬老日
猫の土足を
拭いてゐし

鳥居おさむ

解 説

「敬老の日」なのに、猫の土足を拭いてやっている自分って、いったい…そんな飼い主のぼやきが聞こえてきそうな一句です。この句の季語は、敬老日(敬老の日)。九月の第三月曜日、長年働いて社会を支えてくれたお年寄りに感謝し、その労をねぎらうために設けられた、国民の祝日です。季節は、秋。

本来は、ねぎらわれるはずの自分が、猫の世話をしている…しかし、猫には人間の祝日なんて関係ありません。仕方ないなあと思いつつ、気まぐれな猫が可愛くて仕方がない、そんな作者の気持ちも感じられます。

綺麗に足を拭いてもらった猫は、飼い主に感謝をいうこともなく、またぷいっと出ていってしまうかもしれません。でも、また戻ってきたときは、かわいい鳴き声とともに、全身全霊で甘えてくることでしょう。

9月14日週の猫写真

写真提供:和歌山県 中村まふゆさん

 
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