猫俳句バックナンバー
7月4日週の猫俳句
蜜柑から
猫へとかわる
箱の主
住吉和歌子

解 説

第六回猫俳句大賞 佳作句より。
猫は箱が好き、ですよね。
長く猫と暮らす友人が "あるある話”として「絶対に好きだろうと思って通販でおもちゃを買ったのに、猫は全く興味を示さなくて、通販の箱を気に入ってずっと中に入ってる」と教えてくれたことがあります。
掲句も、猫と暮らす人にとって本当によくわかる景なのでしょう。
ダンボール箱にみっしり詰まった蜜柑を食べていき、蜜柑が無くなって箱を片付けようと思っていたのに、箱はすっかり猫の居場所になっていた。
蜜柑を食べきった、猫が箱を占領していた、どちらもいつの間に?という時間変化と、「箱の主」の表現がユニークな一句です。
季語は「蜜柑」で冬。
こちらの句を佳作に選ばれた及川眠子さんのコメントはこちらからご覧いただけます。
7月4日週の猫写真

写真提供:神奈川県 さちよさん
6月25日週の猫俳句
梅雨の椅子に
暗き顔置き
猫も老ゆ
加藤楸邨

解 説

角川俳句の今月号の特集が「生誕120年 加藤楸邨」だったのを見て、本棚から加藤楸邨句集『猫』(ふらんす堂文庫)を手に取りました。
楸邨の猫俳句と言えば【百代の過客しんがりに猫の子も】が有名ですが、
句集『猫』にはなんと120句(!)もの猫の句が収録されています。
掲句は、まさしく今のじっとりとした梅雨の空気の重さ、身体のだるさが猫を通じて見えてくる一句。
季節の変化を敏感に感じ取る猫は、雨ばかりの暗く湿った日々にうんざりしているのでしょう。
猫「も」とあるので、猫と長く暮らしてきた作者も自身にどこか老いを感じていることが分かります。梅雨明けはまだ先のようですね。
季語は「梅雨」で仲夏。
6月25日週の猫写真

加藤楸邨句集『猫』(ふらんす堂文庫)