猫俳句大賞

猫俳句バックナンバー

10月21日週の猫俳句

肉球に
リモコン触れて
春来る

津久井健之

解 説

肉球とリモコンのボタン、どちらもぷにぷにしていて、つい押したくなりますね。猫の肉球ファンは意外に多く、肉球の押し心地を再現したスマホケースやマウスが商品化されているほど。肉球とリモコンの取り合わせは、肉球ファンにとって垂涎のシチュエーションといえるのではないでしょうか。

この句の季語は「春来る」。2月頭の初春、炬燵に入って寝転びながらテレビを見ていたら、突然猫がテーブルの上に飛び乗り、弾みでリモコンを踏んづけてチャンネルが変わってしまう……そんなほのぼのとしたシーンが思い浮かびます。

この句のユニークな点は、猫が肉球でリモコンに触れてしまったことで、季節が春に変わった、という見方ができるところです。肉球とリモコンのボタン、二つのぷにぷにがぶつかり合うことで、凄い奇跡を起こしたのかも。肉球のパワーは偉大です。

10月21日週の猫写真

写真提供:東京都 いくこさん

 

10月14日週の猫俳句

青葉風
寺受付けの
猫二匹

杉本貞

解 説

季語は青葉風で夏。若葉を吹いていく風、そして寺の受付には猫が二匹。ありありと情景が浮かんできます。お寺にはよく猫がいて、境内でごろごろ寝転がったり、置物のように座っていたり、様々な姿で参拝客の心を和ませてくれますね。

この句では猫が二匹、受付にいるので、なんだか門番のようにも思えます。二匹は兄弟で、阿吽の対となった狛猫のような存在なのでしょうか。この二匹を見るために、お寺にやってくる観光客もいたりして。

この句には、動詞がありません。動詞がないことで、猫の「静」の部分がよりクローズアップされているようにも感じます。この句の中の猫は、ただ寝ているだけかもしれませんが、お寺にやってくる人にとって、大切な役割を果たしているのかもしれませんね。

10月14日週の猫写真

写真提供:鎌倉市 榎田さん