猫俳句大賞

猫俳句バックナンバー

10月14日週の猫俳句

青葉風
寺受付けの
猫二匹

杉本貞

解 説

季語は青葉風で夏。若葉を吹いていく風、そして寺の受付には猫が二匹。ありありと情景が浮かんできます。お寺にはよく猫がいて、境内でごろごろ寝転がったり、置物のように座っていたり、様々な姿で参拝客の心を和ませてくれますね。

この句では猫が二匹、受付にいるので、なんだか門番のようにも思えます。二匹は兄弟で、阿吽の対となった狛猫のような存在なのでしょうか。この二匹を見るために、お寺にやってくる観光客もいたりして。

この句には、動詞がありません。動詞がないことで、猫の「静」の部分がよりクローズアップされているようにも感じます。この句の中の猫は、ただ寝ているだけかもしれませんが、お寺にやってくる人にとって、大切な役割を果たしているのかもしれませんね。

10月14日週の猫写真

写真提供:鎌倉市 榎田さん

 

10月8日週の猫俳句

泣き虫の
子猫を親に
もどしけり

久保より江

解 説

「ニャーコが、昨日ついに子どもを産んだから、見においでよ」

幼なじみの公美から電話をもらい、喜び勇んででかけた私。公美の飼い猫・ニャーコに子猫が生まれたら、一匹もらう約束をしていたのだ。

段ボールでつくられた猫ベッドの中には、ニャーコに舌で丹念に毛づくろいされている小さな5匹の子猫が。

「かわいい!ニャーコにそっくりな茶トラの子も、一番小さいサバトラの子もいいなあ」

「気に入った子がいたら、抱っこしてよく見てみたら?」と、公美。

確かに、もっと近くで顔を見てみたい。抱き心地もチェックできるし。ニャーコの毛づくろいが一段落し、ごろんと横になった隙に、私はサバトラ模様の子猫を抱き上げた。

片手のひらにすっぽり入るくらいの大きさで、不安になるくらい軽い。

すると、ニャーコから離されたサバトラの子猫は、私の手の中で身をよじりながら、ミィ、ミィと、声を張り上げるように鳴き始めた。

「やばい、どうしよう?」

「とりあえず、ニャーコのところに戻そう」公美は私の手からサバトラの子猫を受け取ると、ニャーコのお腹のそばにそっと置いた。

サバトラの子猫は、もぞもぞ動きながらしばらく鳴いていたが、ニャーコのおっぱいにたどり着くと、一心不乱にお乳を吸い始めた。

「あーびっくりした」

「きっと、あんたに食べられると思ったんじゃない?」

「あたしは怪獣か……でも、子猫の鳴き声って、すごく可愛いね」

私たちは、ニャーコに甘える子猫たちの姿をしばらく眺めていた。

サバトラちゃんが心を許してくれるまで、当分公美の家に通うことを、私は決意した。

10月8日週の猫写真

写真提供:神奈川県 すのぅさん