猫俳句バックナンバー
10月28日週の猫俳句
哀しみの
かたちに猫を
抱く夜長
日下野由季
解 説
季語は「夜長」で秋。哀しいことがあった時ほど、夜の長さが身にしみます。何か哀しい出来事に見舞われた人が、飼い猫を抱きあげて堪えている時、普段は気まぐれな猫が、抱かれたままでいてくれている――そんな情景が思い浮かびます。
以前、ある動物学者が、こんなことをいっていました。
「猫は、生まれたばかりの子猫でも、飼い主を甘やかせてくれる。年をとって、老猫になっても、赤ん坊のように甘えてきてくれる。そこが魅力なんです」
猫は、マイペースに生きているように見えて、一緒に暮らしている飼い主を、特別な仲間と認識してくれているのかもしれません。秋の夜長、静かに抱かれている猫から、大いなる優しさが感じられる一句です。
10月28日週の猫写真
写真提供:神奈川県 かむ子さん
10月21日週の猫俳句
肉球に
リモコン触れて
春来る
津久井健之
解 説
肉球とリモコンのボタン、どちらもぷにぷにしていて、つい押したくなりますね。猫の肉球ファンは意外に多く、肉球の押し心地を再現したスマホケースやマウスが商品化されているほど。肉球とリモコンの取り合わせは、肉球ファンにとって垂涎のシチュエーションといえるのではないでしょうか。
この句の季語は「春来る」。2月頭の初春、炬燵に入って寝転びながらテレビを見ていたら、突然猫がテーブルの上に飛び乗り、弾みでリモコンを踏んづけてチャンネルが変わってしまう……そんなほのぼのとしたシーンが思い浮かびます。
この句のユニークな点は、猫が肉球でリモコンに触れてしまったことで、季節が春に変わった、という見方ができるところです。肉球とリモコンのボタン、二つのぷにぷにがぶつかり合うことで、凄い奇跡を起こしたのかも。肉球のパワーは偉大です。
10月21日週の猫写真
写真提供:東京都 いくこさん