猫俳句大賞

猫俳句バックナンバー

12月9日週の猫俳句

猫に貸す
蒲団の隅や
クリスマス

田川飛旅子

解 説

猫を飼っていて、嬉しいことのひとつが、冬場の寒い夜などに、自分の布団の中に入ってきてくれること。猫は気まぐれで単独行動を好む動物といわれていますが、そんな猫が甘えてくる姿は、たまらなく可愛いものです。

この句の猫も、飼い主の布団にやってきます。季節はクリスマス。夜の寒さも身にしみる頃です。クリスマスには華やかなイメージもありますが、「蒲団の隅」という言葉からは、どことなく寂しさが漂ってきます。周りの人々がパーティーで盛り上がっている中、この句の主人公は、一人暮らしのベッドに早々ともぐりこんでいるのかもしれません。

それでも、布団の片隅に猫がいてくれるだけで、心は少しだけ癒されるのではないでしょうか。本当はぎゅうっと抱きしめたいけれど、猫の安眠も妨害したくないし、そっとスペースを空けてあげたのかも。猫と飼い主の信頼関係がうかがえます。

12月9日週の猫写真

写真提供:北海道 がんちゃんさん

 

12月2日週の猫俳句

濃鼠の
奴がボスなり
春の猫

阿波野青畝

解 説

「濃鼠の奴がボス」ということは、たくさんの猫がごろごろしている広場などがこの句の舞台なのかもしれません。濃鼠とは、色の名前で、着物の色を表現するときによく使われます。濃は、濃淡ではなく、濃色(紫色)の意味。グレーがかった、黒に近い紫色が濃鼠色です。

紫は高貴な色と言われていますが、ダークな濃鼠色の毛並みは、やくざの大親分の着物や、マフィアのボスのスーツを彷彿させるのかも? 一発でボスとわかるくらいですから、きっと、身体も大きくて強そうな猫なのでしょう。

「春の猫」という言葉から、のんびりした空気と、ほのかな色気も感じられます。たくさんの手下を従えたボス猫が、春の景色の中でゆったりとくつろぐ姿を想像すると、なんだか痛快ですね。昔の町中には、こうした景色がいたるところで見られたのではないでしょうか。

12月2日週の猫写真

写真提供:東京都 夏記さん

 
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