猫俳句バックナンバー
6月25日週の猫俳句
梅雨の椅子に
暗き顔置き
猫も老ゆ
加藤楸邨

解 説

角川俳句の今月号の特集が「生誕120年 加藤楸邨」だったのを見て、本棚から加藤楸邨句集『猫』(ふらんす堂文庫)を手に取りました。
楸邨の猫俳句と言えば【百代の過客しんがりに猫の子も】が有名ですが、
句集『猫』にはなんと120句(!)もの猫の句が収録されています。
掲句は、まさしく今のじっとりとした梅雨の空気の重さ、身体のだるさが猫を通じて見えてくる一句。
季節の変化を敏感に感じ取る猫は、雨ばかりの暗く湿った日々にうんざりしているのでしょう。
猫「も」とあるので、猫と長く暮らしてきた作者も自身にどこか老いを感じていることが分かります。梅雨明けはまだ先のようですね。
季語は「梅雨」で仲夏。
6月25日週の猫写真
加藤楸邨句集『猫』(ふらんす堂文庫)
10月18日週の猫俳句
猫ちぐらから
手を付ける
冬支度
ちゅんすけ

解 説

第五回猫俳句大賞の佳作句より。
猫を愛する皆さんはよくご存じかと思いますが、「猫ちぐら(猫つぐら)」とは猫用の寝床の一種。
新潟県や長野県産の稲わら・紙紐等を編んで作ったものが有名で、ころんとした可愛らしい形が思い浮かびます。
この句の中に猫は直接登場しませんが、猫と暮らすひとの生活がリアリティをもって見えてきます。
庭木に雪吊や藪巻を施したり、暖房器具を出したり、カーテンや絨毯を冬用のものに取り換えたり…といった冬の支度をするときに、このひとは最初に猫ちぐらから手を付けたのです。
「最近寒くなってきたから温かい猫ちぐらを出しておかなきゃ」という猫ファーストな姿勢が伺えます。
季語は「冬支度」で晩秋。
第五回猫俳句大賞で審査員を務めていただいた保坂和志さんのコメントはこちらからご覧いただけます。
皆さまも冬の猫の思い出をぜひ俳句に表現してみてくださいね。
10月18日週の猫写真
写真提供:熊本県 鐵谷知会子さん

