初日出は新年の季語です。でも、猫にとっては元旦の朝も、いつもの朝と変わりません。大晦日、飼い主たちがお酒を飲んで盛り上がっていたころに、たっぷり睡眠をとった猫は、元旦の朝から元気いっぱい。寝ている飼い主の布団の上に飛び乗ったり、顔を踏んづけたりすることもあるかもしれません。

「正月くらい、ゆっくり寝かせてよ」

猫に起こされて、仕方なく猫のごはんを用意しに台所へ行くと、小窓から一年の始まりを告げる初日の出が――

「ミケのおかげで、良いものが見られたよ」

さっきまで文句を言っていた飼い主は、急にごきげんになって、カリカリではなく、豪華な猫缶を開けてあげるのだった。

季語は「夜長」で秋。哀しいことがあった時ほど、夜の長さが身にしみます。何か哀しい出来事に見舞われた人が、飼い猫を抱きあげて堪えている時、普段は気まぐれな猫が、抱かれたままでいてくれている――そんな情景が思い浮かびます。

以前、ある動物学者が、こんなことをいっていました。

「猫は、生まれたばかりの子猫でも、飼い主を甘やかせてくれる。年をとって、老猫になっても、赤ん坊のように甘えてきてくれる。そこが魅力なんです」

猫は、マイペースに生きているように見えて、一緒に暮らしている飼い主を、特別な仲間と認識してくれているのかもしれません。秋の夜長、静かに抱かれている猫から、大いなる優しさが感じられる一句です。