猫俳句大賞

猫俳句バックナンバー

7月13日週の猫俳句

花野人
バスケットより
猫放つ

小松世史子

解 説

この句の季語は「花野」で秋。「花野人」とは、「花野にいる人」を省略した表現です。秋の草花が咲き満ちた野原に、バスケットに入れていた猫を解き放つ。とても開放感のある猫句です。

普段は室内で飼われている猫ならば、いきなり飛び出して走り回ったりせず、おずおずと花野に降り立ち、最初は周囲を警戒しておとなしくしているかもしれません。でも、慣れてくれば、バッタや蝶を追いかけたり、ふわふわの草花の上に寝転んだり、楽しく遊び始めるはずです。

飼い主は、なぜ猫を花野に連れてきたのでしょうか。猫の運動不足解消のためか、自分自身が仕事や生活の中で、息苦しさを感じていたのかも。花野で楽しく遊ぶ猫をみながら、飼い主自身の心も、きっと解き放たれていくことでしょう。

7月13日週の猫写真

写真提供:群馬県 ankoさん

 

7月6日週の猫俳句

蟷螂の
斧向けられし
猫の顔

加藤楸邨

解 説

蟷螂(とうろう)はカマキリのことで、秋の季語。自分の弱さをかえりみず、巨大な敵に軽率に挑んでしまうことを「蟷螂の斧」といいますが、自分に向かって前足を振り上げて威嚇してくるカマキリに対して、猫はいったいどんな顔をしたのでしょう。

「なんだこいつ。こんなちっぽけなヤツ、戦えば100%おれが勝つはずだけど……なんで逃げないんだろう。毒でも持ってるのかな」と、気味悪そうな顔でカマキリを眺めていたのかも。

猫は基本的にポーカーフェイスと言われていますが、小さなカマキリの思わぬ抵抗にあって、つい平静を失ってしまった猫の姿に、作者は面白みを感じたのかもしれません。

7月6日週の猫写真

写真提供:東京都 葉菜さん

 
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