猫俳句大賞

11月23日週の猫俳句

黒南風や
沖をみてゐる
猫ひとつ

島 青櫻

解 説

「黒南風」は夏の季語で、梅雨の時期に吹く南風のこと。読み方は「くろはえ」です。黒い雨雲に覆われた空に、湿った南風が吹いていく。海辺には、遥かな沖を見ている猫が一匹。きっと、その背中には哀愁が漂っていることでしょう。

猫は自由で独りを愛する生き物、というイメージがありますが、沖を眺めながら「そろそろ嵐が来そうだな」などと呟く渋い姿に、近所のメス猫たちもメロメロになっていたりして。本当は、ただお腹をすかせて、「うまい魚が降ってこないかな~」なんて考えているだけかも知れませんが。

黒南風に対して、梅雨明けの、空が明るくなる頃に吹く南風のことを白南風(しろはえ)と呼びます。こういった風の名前からも、四季とともに生きる日本人の繊細さ、季語の奥深さが感じられますね。

11月23日週の猫写真

写真提供:東京都 新井素子さん