10月8日週の猫俳句
泣き虫の
子猫を親に
もどしけり
久保より江
解 説
「ニャーコが、昨日ついに子どもを産んだから、見においでよ」
幼なじみの公美から電話をもらい、喜び勇んででかけた私。公美の飼い猫・ニャーコに子猫が生まれたら、一匹もらう約束をしていたのだ。
段ボールでつくられた猫ベッドの中には、ニャーコに舌で丹念に毛づくろいされている小さな5匹の子猫が。
「かわいい!ニャーコにそっくりな茶トラの子も、一番小さいサバトラの子もいいなあ」
「気に入った子がいたら、抱っこしてよく見てみたら?」と、公美。
確かに、もっと近くで顔を見てみたい。抱き心地もチェックできるし。ニャーコの毛づくろいが一段落し、ごろんと横になった隙に、私はサバトラ模様の子猫を抱き上げた。
片手のひらにすっぽり入るくらいの大きさで、不安になるくらい軽い。
すると、ニャーコから離されたサバトラの子猫は、私の手の中で身をよじりながら、ミィ、ミィと、声を張り上げるように鳴き始めた。
「やばい、どうしよう?」
「とりあえず、ニャーコのところに戻そう」公美は私の手からサバトラの子猫を受け取ると、ニャーコのお腹のそばにそっと置いた。
サバトラの子猫は、もぞもぞ動きながらしばらく鳴いていたが、ニャーコのおっぱいにたどり着くと、一心不乱にお乳を吸い始めた。
「あーびっくりした」
「きっと、あんたに食べられると思ったんじゃない?」
「あたしは怪獣か……でも、子猫の鳴き声って、すごく可愛いね」
私たちは、ニャーコに甘える子猫たちの姿をしばらく眺めていた。
サバトラちゃんが心を許してくれるまで、当分公美の家に通うことを、私は決意した。
10月8日週の猫写真
写真提供:神奈川県 すのぅさん