12月2日週の猫俳句
濃鼠の
奴がボスなり
春の猫
阿波野青畝
解 説
「濃鼠の奴がボス」ということは、たくさんの猫がごろごろしている広場などがこの句の舞台なのかもしれません。濃鼠とは、色の名前で、着物の色を表現するときによく使われます。濃は、濃淡ではなく、濃色(紫色)の意味。グレーがかった、黒に近い紫色が濃鼠色です。
紫は高貴な色と言われていますが、ダークな濃鼠色の毛並みは、やくざの大親分の着物や、マフィアのボスのスーツを彷彿させるのかも? 一発でボスとわかるくらいですから、きっと、身体も大きくて強そうな猫なのでしょう。
「春の猫」という言葉から、のんびりした空気と、ほのかな色気も感じられます。たくさんの手下を従えたボス猫が、春の景色の中でゆったりとくつろぐ姿を想像すると、なんだか痛快ですね。昔の町中には、こうした景色がいたるところで見られたのではないでしょうか。
12月2日週の猫写真
写真提供:東京都 夏記さん