猫俳句大賞

猫俳句バックナンバー

12月2日週の猫俳句

濃鼠の
奴がボスなり
春の猫

阿波野青畝

解 説

「濃鼠の奴がボス」ということは、たくさんの猫がごろごろしている広場などがこの句の舞台なのかもしれません。濃鼠とは、色の名前で、着物の色を表現するときによく使われます。濃は、濃淡ではなく、濃色(紫色)の意味。グレーがかった、黒に近い紫色が濃鼠色です。

紫は高貴な色と言われていますが、ダークな濃鼠色の毛並みは、やくざの大親分の着物や、マフィアのボスのスーツを彷彿させるのかも? 一発でボスとわかるくらいですから、きっと、身体も大きくて強そうな猫なのでしょう。

「春の猫」という言葉から、のんびりした空気と、ほのかな色気も感じられます。たくさんの手下を従えたボス猫が、春の景色の中でゆったりとくつろぐ姿を想像すると、なんだか痛快ですね。昔の町中には、こうした景色がいたるところで見られたのではないでしょうか。

12月2日週の猫写真

写真提供:東京都 夏記さん

 

11月25日週の猫俳句

秋の夜の
猫のあけたる
障子かな

細川加賀 

解 説

この句の季語は「秋の夜」。秋になると、夜が長くなりますが、美しい月や虫の声など、しみじみとした秋の趣が感じられますね。そんな秋の夜に、猫が障子を開ける。ガチャガチャと慌ただしく開けるのではなく、静かな夜に、すぅっと障子が開かれる感じがします。

猫は、飼い主に用があって、障子を開けて入ってきたのかもしれません。「ご主人、夜空を御覧なさい。月が綺麗ですよ」とか、「今宵は、珍しい虫の鳴き声がしませんか」などと報告に来たのでしょうか。何も用はないけれど、寂しくて飼い主を探していたのかもしれませんね。

猫は障子やふすまを器用に開けて、部屋を移動することができます。でも、閉めてはくれないんですよね……ちなみに、障子は冬の季語なのだそうです。この句には、季語が二つあることになりますが、障子は一年中ありますので、今回の主となる季語は、「秋の夜」になります。

11月25日週の猫写真

写真提供:栃木県 きなりさん

 
1 11 12 13 14 15 17